A「うちの子はお散歩が嫌いで、歩かないんです」
B「散歩に行ってもすぐ帰りたがるの~」
C「ペットショップで、お散歩は必要ないって言われた!」
A,B,C「だから、お散歩はたまにしか行きません」
よく耳にするセリフたちです。
このような子たちには、本当にお散歩は不要なのでしょうか?
お察しの通り、答えはNOです!
お散歩はすべての犬に必要な活動です。
犬にとってお散歩にどんな意味があるのかは、前回の投稿(『犬にとって「お散歩」とは?』)でお話しました。
だったら犬はみんな喜んでお散歩に行くんじゃ…?
それなのに、お散歩を嫌がる愛犬…
変わってるのかな??
いいえ、そんなことはありません!
しかし、果たしてその子は本当に、「お散歩」が嫌いなのでしょうか?
お家の中を歩くのも嫌がりますか?
もしそうであれば、身体疾患の疑いがあるので早急な受診をおすすめします。
そうでなければ、その子は「お散歩」ではなく「外」が苦手なのかもしれません。
✦外が苦手なのか確かめてみよう!
本当に外が苦手なのかどうか、簡単にチェックする方法があります。
それは、オヤツを与えてみること。
➀まずはお家の中でオヤツを与えて、犬がそれを好んで食べるかどうかを確認しておきましょう!
②その後外に出て、同じオヤツを与えてみます。
③玄関前や公園、道端など様々なポイントでテストします。
反応は個体によって様々で、どんな場所でもオヤツを受け付ける子もいれば、外では一切食べない子、場所によって食べたり食べなかったりする子がいます。
犬がオヤツを受け付けなければ、その犬は興奮もしくは緊張状態にあると判断できます。
興奮や緊張があるということは、犬がその状況に対して「なんてことない」と思えているとは言い難いですよね。
お散歩を嫌がる子がオヤツを受け付けない場合、それはお散歩ではなく外を嫌がっているのかもしれません。
では、なぜそう判断できるのか?
少しご説明してみようと思います!
✦マズローの欲求階層
「マズローの欲求階層説」というものをご存知でしょうか?
「自己実現理論」や「マズローの欲求5段階説」とも呼ばれます。
心理学者マズローが、「人間は自己実現に向かい生きている」と仮定した上で、人間の欲求を階層にして理論化したのがこのピラミッドで、今では医療をはじめ多くの業界で活用されています。
我々の欲求のレベルは、下の原始的なものから上の高次的なものに向かって上がっていくと考えらています。
生理的欲求や安全の欲求が満たされれば所属と愛の欲求が芽生え、所属と愛の欲求が満たされると承認の欲求が湧いてくるという具合です。
なぜこの階層をご紹介しているかというと、下の3つの欲求は動物にも共通するとされているんです。
そして、生理的欲求(食事・睡眠・排泄など)と安全の欲求は、同じくらい強いものだといわれています。
✦例えば・・・
私たちに大きな震災が降りかかってきている最中や、銃声の飛び交う場所にいる時
「クッキーをどうぞ」と差し出されても
そのままそのクッキーを食べる人は極めて少ないでしょう。
身の安全が確保されていない状況では、オヤツなんかは後回しですよね(;O;)
犬も同じです。
安心できない状況では、大好物も受け付ける余裕がありません。
とても身近な「外」を、それほどに危険な場所と認識している状態って、健全と言えるでしょうか…?
このままでは、外出の度に強いストレスを受けるばかりではなく、お散歩に行けずに自律神経系の機能も弱まっていきます。
結果として、ストレス性の疾患や脱毛、不適応行動(一般に言う問題行動)などを引き起こす可能性があります。
ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールの過剰分泌は、クッシング症候群や高血糖の原因となってしまうので注意です!
✦「お外嫌い」は克服できる
外が苦手な犬の多くは、社会化の不足が原因になっています。
社会化期に外の環境と十分に触れ合うことができず、外を自分の生きるフィールドではない!と認識し
「外は危険っぽい!こわい!」という学習の結果が続いている状態です。
または、以前までは平気だったにも関わらず外で怖い経験をしたことによって外の環境がトラウマとなったケースもあるでしょう。
いずれのケースでも、行動療法によって「外は怖い所じゃないよ」と教えてあげることができます。
この場でお伝えできる策として…
「外に出て色んな場所でオヤツを与える」というのを2週間ほどやりまくってみてください!
10~20歩進んだらオヤツ!くらいガンガン与えます!
外に出たらすぐ動かなくなる等、外への拒否反応が強い子は遠くへ行かず、1回5分程度に留めると良いです。
かなり大雑把な説明&やり方なので、効果がある子とない子がいるかと思いますが、チャレンジしても悪いことは起きません(^^)
※実際のレッスンでは行動や環境を細かくアセスメントして、その個体に合わせた無理のないプログラムを作成し進めていきます。
犬という動物は本来、外を動き回り練り歩き、時には何かを発見し、捕まえたり調べたりするのが自然な姿です。
十分な経験ができなかったことやトラウマによって、犬らしい生活ができないというのは、少し酷な一生かなと私は思います。
もちろん、上記のケースに当てはまらない子もいることでしょう。
それでも、何らかの原因が必ずあるはずです。
どんな状況でも、改善の糸口は隠されています。
いちドッグラバーとしては、愛犬を想う飼い主様にはどうか「この子は散歩が嫌い」と諦めたりせずに、愛犬が本当に求めるものと向き合ってみていただけると嬉しいです(*^^*)